パナソニックセンター大阪
「おもてなし規格認証」の最高位 「紫認証」取得事業所に聞く
「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に6事業所が認定されました。期待を大きく超えるサービスを提供する事業所に対して付与されるのが紫認証です。認定機関による厳正な審査を経て、2月26日の「伸び盛り企業会議2018」(日本経済新聞社主催)で発表、表彰されました。
紫認証は、認証機関から推薦を受けるとともに、顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について、ミステリーショッパーも活用しつつ確認された事業所が認証されます。
紫認証を取得するためにどんな取り組みが行われたのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第4回は「パナソニックセンター大阪」(大阪府)を紹介します。
「パナソニックセンター大阪」は、西日本最大のターミナルである大阪駅に隣接した複合商業施設「グランフロント大阪」に、2013年オープンしました。自分らしい夢や想いをかたちにしたいという大人世代に対し「Re-Life Story~もっと、人生を、新しく」をテーマに、ライフスタイルを提案する施設です。お客様一人ひとりと直接のコミュニケーションを図り、モノに偏りがちなショウルームのあり方をライフスタイル提案=コト中心の場へと変えたことで、お客様からの信頼を大きく得ました。具体的な商品、ソリューションを提案するなかで、お客様からのご意見・要望を運営に反映していく、新たなコミュニケーションの場として活動しています。
パナソニックセンター大阪 所長の淺田洋史さんに話を聞きます。
(取材:HANJO HANJO)
お客様のニーズを汲み取り形にする
おもてなし規格認証を取得するきっかけは何だったのでしょうか。
去年の春に日本経済新聞で偶然に「おもてなし規格認証」の記事を目にしました。これは自分たちの活動やサービスの品質を見つめ直す機会になりそうだと思いました。また認証を取得することで従業員の意識も高くなっていく可能性を感じ、まずは紅認証の取得から始め、今回の紫認証の栄誉に浴しました。
今回の紫認証では「お客様の相談を具現化する場づくり」が評価されています。そこにいたるまでにどのような発想や議論があったのでしょうか。
商品はあくまでも手段であって、お客様には”くらし方そのもの”へのニーズがあることを強く感じていました。モノを売る発想ではなく、ライフスタイルや生き方からお客様に寄り添っていく必要がある。つまり「モノからコトへの意識の転換」です。それは、数多くの接客を通じてお客様から教えられたことでした。
紫認証の基準である「期待を大きく超えるおもてなし」はどんな形で実現されたのでしょうか。
私たちは、お客様が新しい暮らしを始められることを「Re-Life(リライフ)」と呼んでいます。お客様はライフスタイルに変化を加えたいという”憧れ(ニーズ)”を潜在的にお持ちになっています。しかし、これに気づかれていないケースが圧倒的に多いと感じます。
ショウルームには「Re-Life Story~もっと、人生を、新しく。」というテーマで、13種類のRe-Lifeの物語にそった住空間(モデルルーム)を展開しています。それは「田舎暮らしの夢をかなえたい」「趣味を満喫したい」「今後の親の介護に不安がある」といった、お客様のさまざまなご要望やお悩みにお応えするものです。ここでご自身のニーズに気づいていただき、憧れを叶えるお手伝いをしています。
こういったお客様とのコミュニケーションを通じて、お客様が気づいていなかったニーズを探り出し、具現化する、それら一連のサービスが「期待を超えるおもてなし」として認めていただいたのであれば嬉しい限りです。
お客様の憧れのくらしを実現するには、パナソニックの商品やサービスだけでは不十分です。例えば資金や不動産の相談、介護や相続の問題など、ワンストップのコンシェルジュサービスがあって初めて”憧れのくらし”が実現されるのではないでしょうか。私共ではそのようなご相談をしていただける各分野の専門家がサポートを行っています。
そのほかにもご自身の趣味の幅を広げたり、リフォームや不動産の知識を深めていただけるようなセミナーを”くらしの大学”として毎日開催しております。また大阪府等自治体の皆さんとも連携させていただき、移住・定住にお役立ちできそうなイベント等にも力を入れており、実際に移住でRe-Lifeされたお客様のビデオ紹介なども行っております。
モノからコトへの意識の転換、ショウルームの新しいかたち
「モノからコトへ」を考える上では”働く人”が重要ですね。
主に住空間での接客を通じて、潜在的なニーズ(憧れのくらし)に気付いていただくきっかけ創りをするのがナビゲーター、その憧れのくらしを実現する(Re-Life)ための手段をご提案するのがコンシェルジュです。ナビゲーターとコンシェルジュが、一人ひとりのお客様の想いに寄り添いながらご提案できる体制や”人そのもの”が大切ではないかと思っています。
そんな現場の”人”の声を組織として吸い上げる仕組みがあるんでしょうか。
現場の声は、コミュニケーションカードとして集約し、常に一番大事なものとして扱っています。その中にネガティブな声があればすぐに改善し、お褒めいただいたようなポジティブな声は感動事例として蓄積し、従業員で共有しています。
紫認証取得によるスタッフの反応を教えてください。
初めての紫認証という栄誉でございます。注目をされる事で強いプレッシャーを感じているのが正直なところではありますが、「おもてなし規格認証の最上位に相応しいサービスをしよう」という意識を生んでるように感じています。
組織の壁を超えた「ワーキンググループ」でお客様の声に寄り添う
ここまでは主にお客様へのサービスについてお話をうかがいました。おもてなし規格認証のもうひとつの大きな目的である生産性向上についてもお聞かせください。
まず従業員のスキルアップについては、お客様視点での客観的評価を活用しています。CS(お客様満足度)調査を定期的に実施し、また第三者機関による接客品質調査も同時に行っています。その結果として良い点、悪い点が浮かび上がってきますので、その内容を反映した研修カリキュラムを作り、現場に活かせる実践型の研修を展開しています。
現場の声を社内で共有するためにどんな工夫をしていますか。
組織の壁を超えた「ワーキンググループ」を編成しています。具体的には「お客様にこの施設の価値を伝えるためにはどうしたらいいか」「お客様に寄り添って心地よくつながるためにはどうすればいいのか」等、テーマを設定して選抜メンバーが1ヶ月に2~3回の頻度で議論を交わしています。
議論する機会を数多く設けることで問題解決が早くなりました。並行して週に1度の責任者会議でワーキンググループでの議論を共有しています。また全体会議を月に1度行い、関わっているメンバー全員にもフィードバックするよう心掛けています。
また働き方改革の一環として、社員が個々に机を持たないフリーアドレスを導入し、部門の違うメンバー間のコミュニケーションが生まれるよう工夫をしています。今年に入ってからは大規模なオフィス改装を実施し、仕事の目的に応じて場所を選べるようなレイアウトに変更いたしました。その結果、社内の連携や情報共有がスムーズに行えるようになってきたと感じています。
コンシェルジュサービスでのIT利用が効果をあげています。
コンシェルジュサービスでは、接客履歴を登録させていただいています。お客様が今どういう状態にあるのかという進捗がわかりますので、状況を見ながら適切にサポートできるよう活用しています。また通常の接客時には、さまざまな商品情報や施工事例等が入っているタブレット端末を持っていますので、必要に応じてお客様に情報をご提示することができます。
マニュアル化できない”感性”は映像にして共有する
接客ではマニュアル化できない対応も起こりえます。
マニュアルに反映できることと、できないことがあるということを実感しています。それは、感性、気持ちの部分です。お客様に喜んでいただきたいという気持ちをどうすれば強化できるのか。単純にマニュアル化してその通りにやればいいというものではありません。そのマニュアル化できない部分をスタッフに理解してもらうためにはどんな方法があるのか。それを具体化することに一番苦心いたします。
現在その方法として、お客様からいただいた喜びや感謝の声を全員で共有するのはもちろん、優れた接客事例を映像化して研修に活用しています。映像を見たスタッフが「自分たちの仕事は、お客様にこんなに喜んでいただける価値あるものなんだ」と感じたり、誇りを持ってもらうことを意識して取り組んでいます。
心に残るお客様とのエピソードを教えてください。
体がご不自由な娘さんとご高齢のお母様がお越しになられたことがありました。娘さんはなかなか外に出たがらず、家にこもることが多かったそうです。そこをお母様が無理やりグランフロント大阪までお連れになり、たまたま私どものショウルームにお立ち寄りいただきました。
「バリアフリー・ヴィラ」という介護リフォームの住空間をご覧いただいているときに、ナビゲーターがお声がけをしたのです。娘さんは赤い洋服に赤い帽子をお召しになっていて、偶然、赤い電動歩行器を展示していたものですから、「赤いお召し物がお好きなんですか? よかったらこの赤い電動歩行器をお試しになりませんか」とお勧めいたしました。アシスト機能のある電動歩行器は坂道でもスーッと楽に登っていけます。最初は躊躇されていましたが、それを体験された娘さんはすごくお喜びになられ、「この電動歩行器が欲しい!これを使ってどんどん外に出ていきたい」とおっしゃられたんです。お母様からは「たまたま連れ出した娘が、自分から外に出ていきたいと言いだすなんて思いもしなかった。人生が変わるくらいの転機です。」というお言葉をいただきました。
赤いお召し物から赤い電動歩行器をお勧めしたナビゲーターの感性があったからこそ、お客様のRe-Life(リライフ)につながった良い例として共有した事で、スタッフのモチベーションも高くなりました。こういったマニュアルでは学べない出来事を事例として蓄積して、お客様サービスの向上を図っています。
パナソニックセンター大阪はショウルームの新しいあり方を提示しているように思います。
紫認証を取得できましたが、改善事項はまだまだあります。パナソニックセンター大阪にお越しになった事を機に、”そうか、これがしたかったんだ!”と気付いていただき、その憧れのくらしを実現いただけるよう、これからも切磋琢磨して参りたいと思います。ありがとうございました。
事業者情報
パナソニックセンター大阪
業種 | 製造業 |
URL | https://www.panasonic.com/jp/corporate/center-osaka.html |
認証取得 | 紫認証 |
取得期間 | 2018年 |
所在地 | 〒530-0011 大阪市北区大深町 4番20号 グランフロント大阪 南館 2階~地下1階 |
記事協力
HANJO HANJO